この大会で1トップを務めた当時29歳の前田遼一が「本田たちは世界トップレベルに行けると思っている。自分は気付くのが遅すぎた」と悔恨の念を口にし、30歳を過ぎてからイングランドのウエストハム入りにチャレンジしたように、多くの国内組が「海外へ行かなければ乗り遅れる」という危機感にかられるようになったのは間違いない。

 前田と同い年でカタールでの優勝を経験している岩政大樹も「『世界トップに挑んでいくのは当たり前だ』という感覚でやっていた。そこは僕らとは感覚が全然違った。代表に行くたびにそれを感じて、大きな刺激を受けた」と神妙な面持ちで語ったことがある。彼は2013年限りで鹿島アントラーズを退団し、タイのBECテロ・サーサナ移籍に踏み切ったが、それも本田世代から触発された部分が大きかったからだという。その後、アジア各国へ赴く者も増えたが、岩政がそのけん引役になったと言えるのではないか。

 そして今、時代はさらに進み、堂安や冨安のように18〜19歳で欧州の扉を叩き、A代表の主力になるケースが出てきた。堂安と冨安は2017年にはU-20ワールドカップ(韓国)に出ていた選手。これまでの感覚ならば、そこから数年Jリーグで活躍して海外に行き、2020年東京五輪を経て、A代表の大黒柱になるというのが順当な筋道だったが、2人はその既成概念を打ち破った。過去には19歳でバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)へレンタル移籍した宇佐美貴史のように、20歳以下で海外挑戦する選手もいるにはいたが、クラブで出場機会を得られず苦しむことが多く、いきなりA代表に飛躍することはなかった。

 堂安と冨安は自国開催の東京五輪を控えた存在ということで、日本サッカー協会や森保監督から多少は特別視されている部分はあるかもしれないが、アジアカップのパフォーマンスを見る限りではロシアワールドカップ16強戦士に混ざっても見劣りすることはなかった。むしろ、堂安などは苦しんだ初戦・トルクメニスタン戦で決勝点となる華麗な反転左足ゴールを決めるなど、堂々としたパフォーマンスを随所に見せていた。冨安にしても190cm近い高さを誇り、センターバックとボランチを両方こなせるマルチプレーヤーで、使い勝手が非常にいい。今大会ではMVP級の活躍ぶりで、キャプテン・吉田麻也をしのぐ存在感を示したとも言っていい。そこは大いに評価すべきだろう。

次のページ
新時代を迎えつつある日本代表