スタンドからやんやの大喝采を受けた野村は「やっぱりファンの声援がプロ選手にとっては一番の支えだったよ」とさすがにうれしそう。

 最後に行われた引退セレモニーでは、史上初の3千試合出場を達成した8月1日の南海戦でもバッテリーを組んだ松沼博久が運転するカートに乗って、グラウンドを1周。「長い間、ご声援ありがとうございました」と声を詰まらせながら、スタンドのファンに最後の挨拶をして回った。

 くしくもこの日は、本藤崎台球場で巨人vs阪神のオープン戦3連戦の最終戦も行われ、同年限りで現役引退を発表した王貞治が現役最後の打席で、当時日本一広かった同球場(両翼99メートル)の右翼席に豪快な本塁打を記録。「神様が打たせてくれたんでしょう」と感涙にむせんだ。

 かつて通算本塁打数を争った“ON”が同じ日に揃って現役最後の打席を本塁打で飾るという因縁深いフィナーレとなった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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