さて、仲間内で楽しめればいいとなると、私の経験から卒業旅行の盛り上げ方についてのいくつかのアドバイスをしておこうと思う。

 まず、いちばん大事なのは「盛り下げない」ことである。そのためにはタイミングを外さないことである。卒業旅行というのはタイミングが限定されるところがあり、さきほども述べたように3月に集中するためエリアによっては非常に過ごしにくい気候の場所もある。例えば東南アジアでは4~5月あたりが酷暑で、3月でも十分に暑い。日本との寒暖差にやられて体調を崩しやすくなるから要注意だ。

 気候については事前に知っていれば対処もできるだろうが、なかにはどうにもならないこともある。いま日本の旅行者んに人気の南米ボリビアにあるウユニ塩湖などは、「鏡張り」の状態にならないとただの干からびた湖である。

 鏡張りになるには、(1)雨が降ったあと、(2)晴れていて、(3)風がないなどの諸条件が重ならないと駄目なのだ。3月はギリギリハイシーズンで、見られる確率は高い。それでも100%ではない(なかにはハイシーズンでも見られる確率は2分の1という説もある)。だからこそ、卒業旅行にウユニ塩湖だけで一点突破しようとするとリスクがあるかもしれない。もちろん何人かで行って、見られなくてもいいと開き直るのも旅の思い出としては悪くないと思う。

 なんにせよ、行く前に目的のイベントなどについて「この時期は大丈夫かな?」という下調べは十分にしておくことをおすすめしたい。

 ジャーナリストの世界には「Right Place Right Time」(適切な場所に適切なタイミングで)という言葉がある。「タイミングと場所がかみ合えばそれだけで取材は成功する」的な意味で使われることが多い。

 卒業旅行でもこれができれば、ほぼ成功である。それに、失敗を分かち合って楽しめる仲間がいるのであれば、別に正しくないタイミングであってもいいと思うところもある。むしろ若いうちこそ失敗は重ねておいてもいいのかなとは思う。もちろん、無事に戻ってこられる範囲のものに限る。

 これから計画を立てる人も、もう旅に出ている人も、人生で忘れられない体験をしてきてもらいたい。ちなみに私はいまだに旅生活を続けているので、どんどん上書きされているのだが。

(文/ジャーナリスト・丸山ゴンザレス、イラスト/majocco)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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