決して、難しい見方ではない。むしろセオリー通りのことでもある。狙い球は絞りやすくなる。初球は143キロのストレート。秋山が狙い澄ましたかのようにはじき返した一打は、中堅右を破る二塁打となった。金子侑は三塁を回ったところでスピードを緩め、流しながら余裕のホームイン。山川が四球を選んで、さらに2死一、二塁とすると、森が中前へタイムリー。3回表までで、ロッテに3点リードを許しながら、この時点で1点差にまで追い上げた。

 これが、西武打線の底力でもある。

「金子は、足がある。しかもスイッチヒッターで、盗塁王も獲っている。1番にいれば得点率は高くなるでしょうし、十分にあり得る打線ですね」

 オリックスの渡辺正人スコアラーも、この新打線が、早くもフィットし始めていることに、警戒心を強めていた。

 試合後、辻監督の会見が行われた。

 秋山は宮崎・南郷での1次キャンプ中盤、咽頭炎による発熱で3日間、練習を回避していたため、この日が今季初の対外試合出場だった。3番に座って、タイムリーを1本。2019年の“辻構想”で肝となる3番・秋山の「存在感」を改めて問われた指揮官は、同一リーグ相手の敗戦後とあって、それまでは口をへの字に曲げて、ちょっと重苦しい表情だったのが、そこで一転した。

「もちろん、言われなくても、間違いないですよ」

 思わず笑みがこぼれてしまったのも、無理のないことかもしれない。昨季12球団トップのチーム打率・273。その力強さは、全く消えていないどころか、新たなる組み合わせで、バージョンアップした感さえある。

 この打線で、いけるぞ――。

 その手応えが、辻監督の表情ににじみ出ていた。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。