■芸人にはない瞬発力とフェアプレー

 考えてみれば、これまでは、ボクシング選手やプロレスラーにとぼけたキャラクターの人が多く、バラエティー向きの人も多かった。一方で女子アスリートは、元マラソン選手の松野明美(50)や元バレーボール選手の大林素子(51)なども長らくバラエティー出演を続けている。

「これまでは男性のプロスポーツの方が圧倒的な人気がありましたが、最近では女子スポーツもメジャーとなり世界でも活躍しています。最近だと浜口京子(41)もそうだし、今年、電撃引退を表明した吉田沙保里(36)も、今後の活動が注目されています」(同)

 もちろん、彼女たちはアスリートとしても超一流。特に、吉田は女子レスリングで指導者としても大いに活躍していくだろう。TVウォッチャーの中村裕一氏は、彼女たちの人気の理由についてこう見る。

「アスリートタレントの強みは瞬発力、すなわち反応速度、適応能力の高さです。バラエティー番組で、MCによる突然のフリや、目の前で突然起きた出来事に対しても即座に反応し、会話やその場のムードを成立させる能力に優れている。このため、制作サイドとしては非常に助かると思います。もう一つは『邪念のなさ』。これがお笑い芸人や売り出し中のタレントだと、『爪痕を残さなければ』とか『次につなげなければ』という気持ちが勝り、どうしても他人を蹴落として自分が前に出てしまいがちです。しかし、彼女たちはさすがスポーツマンらしく、いたずらに他人を貶めるようなことは決してしません。その上で思ったまま、感じたままを口にするからおのずと好感度も上がっていく。もちろん一流のテレビタレントになるには知識や経験など厳しい壁が待ち構えていますが、持ち前の精神力で乗り越えることも決して不可能ではないでしょう」

 まずは2020年の東京五輪を前にして、スポーツ×バラエティーという枠でさらなるアスリートタレントが発掘されるかもしれない。(ライター・黒崎さとし)