こうしたチャレンジが40年の蓄積になっている。

「私のチャレンジは、戦略というよりも、あくまでもそのときの自分の好奇心に素直にしたがっていた気がします。おもしろそう、とか。何かが起こりそう、とか。きっと、そういう性格なんでしょうね。私は父親に似ているんです。父は建築やセメントを手掛ける会社を経営していて、おおらかでアイディアマンでした。私は末っ子で、いつも父のそばにいたんですよ。音楽を始めたのも父にピアノを習わされたからでした。ピアノのお稽古は苦手だったけれど音楽は好きで、ポール・モーリアのレコードを何度もくり返し聴き、耳で音をコピーして、ピアノで再現していたほどです。デビューのきっかけも、父の親友の息子さんがテレビの音楽番組のプロデューサーだったことでした。父はいつもチャレンジしていた。それが私にも影響していると感じています。今思えば、40年では挫折もありました。でも、いつも自分をあきらめきれなかった。だから続けてこられました」

 次の公演は、3月のビルボードライブ東京とビルボードライブ大阪。

「今回の1980年代、1990年代に一緒にツアーをまわったメンバーを集めました。私の代表曲、新曲はもちろん、オリジナルナンバーのほかにも、ホールでのコンサートではあまり歌わない楽曲や、長い付き合いの音楽仲間たちとの息の合ったセッションを楽しんでいただけると思います。ビルボードのステージだけの曲もあるので、楽しみにしていてください」

(神舘和典)

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神舘和典

神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

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