子どもたちの国籍は、半分以上がフィリピン人だ。現地でインターナショナルスクールの学費をまかなえるのは富裕層の家庭なので、みな教育熱心で、英語力も高い。フィリピン人以外の国籍はさまざまで、学年によるが、アジア出身では、韓国人や日本人が2、3割という程度だ。クラスに日本人がいても、もちろん会話は英語だ。

 息子は最初、登園するたびに泣いていた。でもそこは子どもの順応性で、お迎えの時間になると笑顔で友達と遊んでいる。そんな日々を1カ月過ごした頃、みんなで円をつくり、先生が子どもたちに意見を聞く「サークルタイム」で、息子の口から“Yes”という言葉が出た。恐らくこれが英語で自分の意見を述べた、初めての経験だ。

 それからは着実に英語を身につけていった。2ヶ月半を過ぎた頃、何にでも“I’m”とつけるようになった。お菓子の袋を開ける時は“I’m open it”、あけられない時は“I’m not open it”。文法的に正しくはないが、何が言いたいかはつかめる。また、幼稚園でよく使う言葉はすっかり口になじんだようで、おもちゃを取られそうになれば“No, it’s mine.”嫌なものがあれば“I don’t like it.”と流暢に発音するようになった。文字は読み書きできないので、耳から覚えて話し始めた。

 最終的に英語を使って積極的に自分の意思を伝え始めたのは、入園から5ヶ月目。これでも、まわりの日本の子どもたちと比べそれほど早いほうではない。1年後にはアメリカ人の大人との会話を楽しめるようになり、大人のジョークを一緒に笑うまでになった。また、アメリカ人から「彼の英語はアメリカン・イングリッシュだね」と言ってもらえるほどの発音の良さだ。

 インターナショナルスクールという場所柄、フィリピン人だけでなくたくさんの国籍の友達ができた。なかでもスウェーデン人の友達とは大親友になり、休日も遊ぶ仲になった。日本にいたら知ることのなかった世界を、躊躇なく受け入れ楽しんでいる。

 日本に住んで仮に3年間、月1万円の英会話教室に通ったら学費は36万円。仮に30万円程度の学費で1年間学んで英語力が身につくなら、留学はコスパがいい、ともいえないだろうか。

 日本ではまだ知る人ぞ知るフィリピンへのインターナショナル留学。本気で英語力をつけたいなら、考えてみてはいかがだろう。

(文/井上綾子)