復活を目指すオリックス・T-岡田(写真提供:喜瀬雅則)
復活を目指すオリックス・T-岡田(写真提供:喜瀬雅則)

 宮崎市の中心街から、南西方向へ車でおよそ20分。オリックス・バファローズのキャンプ地・宮崎市清武総合運動公園は、1、2軍が同時に練習を行える2つの球場が隣接しており、ブルペンでも10人が揃って投げられる。室内練習場でも、内野手がノックを行う傍らで、投手陣が体幹トレに取り組み、その奥ではマシンに向かって打ち込む野手陣の姿がある。約1カ月のキャンプ生活を送るには、申し分ない練習環境が整っている。

 2月13日、第3クール初日。

 全体練習が終わった夕刻、室内練習場の片隅でT-岡田はたった一人、一心にバットを振り続けていた。そのメニューに、自らの課題と弱点を踏まえた上での“独自の工夫”が見えた。

「体の使い方なんですよね。腰を入れるのではなく、胸椎をぐーっと左に回旋させていく。それで、ボールの内側からバットを入れていく。体の動きを意識してバットを振ろうとするのではなくて、体をこうして使うことで、バットが自然についてくる感覚。振ろうとすると、バットが体から離れちゃう。だから、そこを意識しています」

 軸足となる左足への体重移動の際、腰を大きく捻ろうとすると、それに伴って、体全体が捕手側へぶれてしまう。そうではなく、下半身はどっしり、胸椎を意識して上半身をぎゅっと捻り上げる、その“ねじれ”が生み出すパワーを、バットを通してボールに乗せていく。トス打撃でワンバウンドさせたボールが地面を跳ねる“間”に、自分の型を作って、投球を待つ。その感覚と動きを、体にしっかりと刻み込ませているのだ。

 これを、黙々と30分。続いて今度はトスを捕手方向、自分の後ろから投げてもらうという“逆トス打撃”を始めた。投手がマウンドから投げる通常の投球とは真逆となる球を、前に打ち返していく。バットを振り抜く方向へ遠ざかっていく球を捉えようとしていく動きだ。これは難しい。

 球の動きを追いかけると、体が前に流れてしまう。ミートポイントを見極め、前に体が突っ込まないように、自分の「打つ形」の中でボールを捉えなければならない。

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なかなか戻せなかった狂った歯車