列はなかなか進まない。30分ほど待っただろうか。短い列側にいた公安が、「こっちへ来い」と僕に合図を送ってきた。いわれるままに、短い列についた。すぐに列の先頭になった。そこでわかったことは、チェックはなにもなく、回転ドアを押せば外に出ることができる構造になっていた。

 回転ドアを通りながら、隣の列を見た。ウイグル人ばかりだった。彼らはまず、身分証明書をリーダーに読みとらせる。するとモニターに顔が映しだされる。公安はその顔と身分証明書の顔写真を照合する。荷物はX線検査機を通し、金属探知機のゲートを通り、その先でボディチェックを受ける。

 駅に降り、ホータンの街に出るまでに、ウイグル人は皆このチェックを受けなくてはならない。時間がかかるわけだ。

 ウイグル人にしてみればこれが日常なのだろう。淡々とした面もちでチェックを受けている。

 回転ドアを出たところで振り返ってみた。出口の文字がふたつ、駅舎の入り口に輝いていた。右手には入口の文字があった。駅舎に入るときも、ウイグル人と漢民族は別の口になる。溜め息が出た。

 市内に向かうバスは終わっていた。しかたなくタクシーに乗ったが、ホテルに着くまでに2回の検問を受けた。ホテルに着いたのは午前3時近かった。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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