約1年前に第3子を出産した。また交通事故を起こしてはいけないと、今度は、清美さんが職場復帰後の2か月は夫が育児休業を取得して家事と育児をカバーした。その後は、少し前にできた院内保育所に子どもを預けながら働いている。

「せめて私も2か月でも育児休業をとることができれば、首もすわってから保育所に預けられたのに。同じ頃に出産した友人は、まだ育児休業中。臨時職員だということで、なぜ自分は幼いわが子とじっくり過ごすことができないのか。駆け足のように赤ちゃんの時期が終わってしまった」と、清美さんは無念に思っている。

 子どもが熱を出しても実家には預けられないため、清美さんは地域で病児保育を使った第1号となった。

 臨時職員に夜勤はないが、夜の救急外来の待機番の当番は回ってくる。産後すぐに、上司から「待機番やって」と言われた。その時は、さすがに仕事を辞めなければならないと覚悟したが、清美さんが労働組合に相談すると、産後間もない期間の待機番はしなくてすむようになった。

 子どもが1歳になると、月2回ほど土日の出勤も命じられて、「カテ番」のシフトに組み込まれた。心筋梗塞などを起こした救急患者が受ける心臓カテーテル検査の当番のことだ。急患がなくても院内にいなければならないため、拘束される手当としてカテ番は1回5000円がつく。院内保育所に子どもを預けると1日で約2000円かかるため、差額で得られる収入は微々たるものだ。

検査技師になって10年。日給8300円で月収は17万円程度。満足いく条件ではないが、「他の就職先を探しても賃金が下がるだけ。民間と比べれば、自治体病院は非正規でもまだいい。民間企業で働く夫の収入だけでは不安だ」と、転職もままならない。

 専門学校時代の友人には、仕事が不安定で結婚していない人もいる。結婚した同級生は出産すると仕事を辞めている。今でも臨時職員で1年限りの募集でも人が集まるという。検査技師の代わりはたくさんいるということだ。

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「女性は産んだら辞めろ」が本音なのか