一方で大黒柱トラウトは2020年シーズン終了後にFAになる予定である。エンゼルスは“生涯契約”をオファーし、引き留めに尽力すると米各メディアが昨シーズン終盤に報じたが、トラウト本人はチームにとどまるかの明言は未だに避けており、最悪の場合は他チームへの移籍も考えられる。もし、そうなった場合は、戦力が大幅に低下するのは間違いなく、その穴を埋めるだけの若手も育っていない。

 イチローは1年目からセンセーショナルな活躍を見せ、すぐさま地元の人気選手となった。そんな選手を球団が長く保有したいと思うのは当然で、目まぐるしく移籍が繰り返されるメジャーでも、マリナーズは数少ないフランチャイズプレイヤーとしてイチローを重宝し続けた。それは選手としてはとても喜ばしいことではあるに違いない。

 とはいえ、ただでさえ30球団とチーム数が多く、戦力均衡化のために様々なルールが存在するMLBでは、チームの補強が失敗すると、選手の大きな目標であるワールドシリーズ制覇のチャンスは中々やってこない。イチローは未だに現役を続けており可能性がないとは言い切れないが、今年も所属するマリナーズは米大手スポーツ専門局『ESPN』のウェブサイトでは、ア・リーグ西地区でレンジャーズと並び最低の評価。ワールドシリーズ制覇はかなり厳しい状況だ。

 大谷も昨年は二刀流として高いポテンシャルを発揮し、イチローと同様アメリカの野球界を1年目から席捲した。今年は投手としては登板することはないが、2020年以降は再び二刀流としてのプレーも期待され、活躍すればするほどに長期契約オファーを受ける可能性も高まるはず。しかしその場合、仮にエンゼルスが長期の低迷をしてしまえば、自身のパフォーマンスが向上しようが、チームとしてのゴールは達成できない。

 これまでもケン・グリフィーJr(マリナーズほか)やアーニー・バンクス(カブス)など、殿堂入りを果たしながらも、ワールドシリーズは未経験だった選手も存在する。大谷には彼らに負けない成績を残しては欲しいが大舞台で活躍するという意味では、“別の道”を歩み、最高の舞台で躍動する姿を見せてほしい。

 早ければ2023年のオフにFAとなる大谷。その頃にはエンゼルスが世界一にたどり着けずとも、最低でも “勝てるチーム”となっていることを願いたい。