かつては阿波踊りのクライマックスで行われていた総踊り (c)朝日新聞社
かつては阿波踊りのクライマックスで行われていた総踊り (c)朝日新聞社

 昨夏は「総踊り」の中止を巡って紛糾した徳島の名物、阿波踊り。徳島市などでつくる「阿波おどり実行委員会」は、今夏の阿波踊りは運営を民間委託することを決め、2月15日に募集要項を公表した。

 昨夏は徳島市が中心となった実行委員会が阿波踊りを開催し、フィナーレを飾る総踊りを中止か、決行かを巡り、ゴタゴタした結果、桟敷席はガラガラ、入場者が激減し、赤字となった。

 その反省から有識者会議などで議論し、阿波踊りの運営の民間委託を決定した。

 ところが、公表された民間事業者の募集要項、要求水準書(仕様書)によると、選定された事業者が実行委に毎年支払う「納付金」を最低500万円と定め、期間中の天候などに関係なく支払いを義務付けている。

 さらに市が所有する演舞場の桟敷については、300万円未満の小規模な修繕は事業者に負担を求め、納付金の最低額500万円は「台風で中止になるなどの影響による収支の状況にかかわらず納付する」と規定され、その上、利益からこの500万円を差し引いた額のうち、最低でも20%を納めるよう要求しているのだ。

 要求水準書では、桟敷席の入場料やボランティアの人数まで、こと細かく決められており、これまで阿波踊りの運営の中心だった徳島市と徳島新聞社の関与は記されていない。

 昨夏の総踊りの中止を巡って徳島市と対立した阿波踊り振興協会の山田実理事長は、こう危惧する。

「500万円の納付金をとり、儲かったらさらに20%をくれ。徳島市は何もしない、責任はすべて事業者側。雨で中止になっても、徳島市は対応しない。それなのに徳島市は『みんなの阿波踊り』がキャッチフレーズだというが、とても、みんなが喜んで参加する状況ではないですね。公募に応じるところは出てこないのでは…」

 2年前まで阿波踊りを主催していた徳島市観光協会の事務局長だった花野賀胤さんは公表された募集要項、要求水準書についてこう話す。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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