巨人・松原聖弥 (c)朝日新聞社
巨人・松原聖弥 (c)朝日新聞社

 昨年の日本シリーズで猛威を振るった『甲斐キャノン』。しかし昨シーズン、その甲斐から4個の盗塁を決めたのが3度目の盗塁王に輝いた西川遥輝(日本ハム)だ。これまでの通算盗塁数226に対して失敗はわずかに33。現時点での成功率.872は通算200盗塁以上をマークした選手の中で鈴木尚広(元巨人)を抜いて、歴代最高の数字である。甲斐の活躍でこれまで以上に捕手と走者のせめぎ合いがクローズアップされることになりそうだが、今回は今シーズンのブレイクが期待される若手の“いだてん”を紹介したいと思う。

 オフに大型補強をした巨人の中で、生え抜きのスピードスターとして期待がかかるのが松原聖弥だ。仙台育英時代は3年夏に甲子園に出場するも自身はベンチ外。大学でも首都大学2部の明星大に所属していたが、そこでの活躍が認められて2016年の育成ドラフト5巡目でプロ入りを果たした。一年目は三軍での出場がほとんどだったが、そこで持ち前のスピードを発揮して、2年目の昨年7月に支配下登録。二軍ではリーグ2位の24盗塁をマークし、リーグ記録となる134安打を放つ活躍を見せた。

 松原の良さはトップスピードになるまでがとにかく速いこと。昨年11月に行われたMLB選抜と巨人のエキシビジョンマッチでランニングホームランを放って注目を集めたが、同じ試合で放った内野安打では打った直後に少しバランスを崩したもののそこからすぐに加速して、4.00秒を切れば俊足と言われる一塁到達タイムは3.93秒をマークしている。この春のキャンプでは一軍メンバーに抜擢され、10日に行われた紅白戦では2打数1安打2打点2四球と見事なアピールを見せた。今年から足のスペシャリストとして長く活躍した鈴木尚広が走塁コーチに就任するのも松原にとって追い風になるだろう。スイングした後に体が一塁側に流れやすいのは課題だが、ミート力の高さには定評があるだけに、スピードをさらにアピールしてまずは開幕一軍入りを目指したい。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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阪神にもスピードスター候補