白血病というと、世間では「不治の病」といったイメージの話ばかり出てくるが、一部を除いて化学療法(抗がん剤)の効果が極めて高い腫瘍である(「がんと闘うな」の先生もこれだけは例外と認めている)。

■不治の病ではない。壁は乗り越えられる

 抗がん剤には正常な骨髄の機能も抑制するという大きな副作用もあるが、骨髄移植(あるいは臍帯血幹細胞移植)により、骨髄機能を維持し、最大の脅威である日和見感染を防ぎながら、耐性を生じないような適切な薬剤投与を行うことで、多くの方が寛解を得ることができる。もちろん、これには高度の設備と経験のある血液内科医による診療が不可欠である。

 筆者が米国に留学していた1980年代後半、世界三大テノールのひとりホセ・カレーラスは急性骨髄性白血病に罹患し一時期活動を休んだが、骨髄移植と化学療法を受け、すっかり元気になって活躍している。

 読者の方やご家族、知人で万が一、白血病と診断された方は、強い気持ちを持って、迷わず標準治療を行う専門医の扉を叩いていただきたい。そう、「今では治り得る病気」なのだから。

◯早川 智(はやかわ・さとし)
1958年生まれ。日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授。医師。日本大学医学部卒。87年同大学院医学研究科修了。米City of Hope研究所、国立感染症研究所エイズ研究センター客員研究員などを経て、2007年から現職。著書に『戦国武将を診る』(朝日新聞出版)など。

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早川智

早川智

早川智(はやかわ・さとし)/1958年生まれ。日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授。医師。日本大学医学部卒。87年同大学院医学研究科修了。米City of Hope研究所、国立感染症研究所エイズ研究センター客員研究員などを経て、2007年から現職。著書に戦国武将を診る(朝日新聞出版)など

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