■FC東京 C

 年末までディエゴ・オリヴェイラの完全移籍が決まったぐらいで、出て行く選手の情報ばかりでほぼ音沙汰なしだったが、年が明けてからU-20代表FWの田川亨介(←鳥栖)、韓国代表クラスのサイドアタッカーであるナ・サンホ(←光州FC)などの獲得、そして久保建英(←横浜FM)の復帰も発表された。特に高速ドリブルを誇るナ・サンホはヒットしそうな予感が漂う。長谷川健太監督が率いるFC東京は鋭いカウンターを武器とするが、良くも悪くもシンプルな攻撃は昨季の後半戦ではかなり対応されやすくなっていた。しかし、ナ・サンホが左サイドに加わることで、相手が分かっても止められない迫力あるカウンターを繰り出せそうだ。

 17歳になった久保も走力のアップに努め、持ち前の技術をFC東京のスタイルの中でも発揮する意識改革が見て取れる。もう1人ブレイクしそうなのがブラジル人のアルトゥール・シルバ(←ヴォトゥポランゲンセ)。右サイドバックとサイドハーフをこなす23歳の選手で、独特のリズムを持っており、硬質な攻撃にサイドから明確なアクセントを付ける存在となりそうだ。

■川崎フロンターレ B

 下部組織から昇格のFW宮代大聖と新卒のMF原田虹輝(←昌平高校)を含めて8人と多くはないが、実績の確かな3人のブラジル人選手にGK藤嶋栄介(←山口)、高さ、得点力、展開力を兼ね備えるMF山村和也(←C大阪)、左右のサイドバックをこなせる馬渡和彰(←広島)とポイントを押さえた補強で、リーグ2連覇を果たした昨季を上回る戦力を手に入れたといえる。

 目玉は元ブラジル代表FWのレアンドロ・ダミアンで、細かいパスで崩す川崎のスタイルにシンプルなクロスやポストプレーからゴールを狙える高さと力強さが加わるのはリーグ戦で相手に引かれた時はもちろん、ACLの戦いを見据えても大きい。187cmのダミアンと186cmの山村が加わることで、アジアの戦いでもめったなことでは高さ負けしない。

 右サイドバックが本職のマギーニョ(←ヴィラ・ノヴァ)は馬渡と、屈強なセンターバックのジェジエウ(←パラナ・クルーベ)は谷口彰悟や奈良竜樹との競争となるが、J1リーグ、ACL、ルヴァン、天皇杯の全てを獲りに行くにはレギュラークラスの選手が各ポジションに2人いることが重要になる。ダミアンが1トップに入る場合はFW小林悠が右に回り変則2トップに。自慢の2列目に加えてボランチではユース出身の田中碧が台頭するなど、3連覇、さらにカップ戦のタイトル獲得に向けて準備は万全に近い。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。