日本では、医師の処方なしに緊急避妊薬を手に入れることはできません。保険診療ではなく自費診療であり、費用も約2万円前後と高額です。


 
 ちなみに、世界の多くの国々では、市販薬として薬局やドラッグストアで手に入れることができます。費用も1000円から2000円と手頃な価格に設定されています。英国やカナダなど無料で提供している国や地域もありますが、高くても5000円で手に入るのです。

 日本で唯一承認されている緊急避妊薬は、ノルレボ錠です。性交渉後72時間以内に1錠(1.5mg製剤)内服すれば妊娠を防ぐことができます。エラという性交渉後120時間以内に内服すれば妊娠を防ぐことができる緊急避妊薬も存在しますが、日本の場合、輸入して処方している病院もあれば、そうでない病院もあるのが現状です。緊急避妊薬にたどり着くことができなかったというケースは多々あると思われます。

 実は、2017年に「ノルレボ錠」を薬局で薬剤師の指導のうえ購入できるようにするか、厚生労働省の検討会で議論になったことがありました。性教育が不十分であり、乱用や悪用の心配があるとして見送りとなってしまったのですが、その検討会では、緊急避妊薬のオンライン処方についても話が出ていたと言います。

 確かに、そのような心配がなされてしまっても仕方ないと思います。性教育が十分でないことは明らかであり、アフターピルさえあれば、避妊しなくてもいい、と誤った認識がなされてしまう可能性は十分あるからです。また、男性が女性にアフターピルを無理やり飲ませる、というケースも発生するかもしれません。

■GW10連休がアフターピル処方に影響する?

 さて、今年のゴールデンウィークは10連休。医療機関によって休みにするのか、通常通りの診察とするのか、休日対応となってしまうのかなどと差があると思いますが、アフターピルを処方してほしくても「病院が空いておらず内服できなかった」というケースが少なからず発生してしまうことは容易に想像がつきます。3連休明けに処方してもらおうと思っていたら72時間経過していた、ということが現状で生じているのですから。

 緊急避妊薬のオンライン診療処方についての検討が始まったことは大きな一歩だと思います。大型連休を考慮すると、薬局で手に入れられるような環境づくりと、同時に教育も行って行くことが求められているのではないでしょうか。

◯山本佳奈(やまもと・かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー、CLIMアドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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