それが証拠に「ここまでのことを書かれるということは、オレ、自分が気づかないうちに、何か悪いことでもしたのかなぁ」と自問自答していた。その一つが、食べた後に店員からラーメンの味を尋ねられた時の細かいやり取りだった。

「ラーメン、いかがでした?」と尋ねられ、たむらとしては、十分美味しかったが、若干、麺とスープの相性に改善点の余地もあるような気もした。ただ、それを通りすがりの門外漢が言うのも烏滸がましいと思ったので、それは言わずに、普通に「美味しかったです」とだけ言い残した。ただ、前述のような気持の動きが自分の中であったため「美味しかったです」という言葉を口から出すまでに、少し、間があったという。その間があったことで、先方が気を悪くしたのか。そんなところまで、思いを巡らせもしていた。

 僕も、騒動後、一人の客としてそのラーメン店に行ってみた。行ったのは2月7日木曜の午後2時ごろ。ランチ時としてはピークを過ぎた時間帯だったが、カウンターだけの店内は満席。非常ににぎわっていた。店内には製麺機やこだわりがうかがえる小麦の袋なども見え、極めてニュートラルに見て、意欲的に頑張っているラーメン店という印象を受けた。接客や言葉遣いもかなり丁寧な部類に入るという感じだったし、ツイッター上でのことが本当にこのラーメン店が発信地になっているのかと思うくらいの印象ではあった。

 普通に暮らしていたら、どちらかというと人格者みたいな印象を受ける人物が、匿名性が守られているSNSで極めて攻撃的になるというのは“あるある”のこと。人の悪意や攻撃性を増幅させる要素がSNSにはあると言われるが、今回の騒動は、幾重にも、そこを見せつけられたものでもあった。

 この騒動後、複数の芸人とこの話題について話をしたが、話す論調は恐ろしいほど似通っていた。

「顔や名前が知られている人間がSNSをやっている以上、こういうことに巻き込まれるリスクは絶対にある。いろいろなことに気を付けながら、力を使いながら、SNSを続ける。本当にそこまでして続ける意味があるのか。一度冷静にメリットとデメリットを天秤にかける大きなきっかけに今回のことはなったと思う」

 この騒動自体は収束に向かっているが、実はもっともっと大きなうねりが起こる端緒にこの件がなるような気がしてならない。(芸能記者・中西正男)

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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