今季から就任の赤堀元之投手コーチも「(松坂は)遠投で仕上げていくタイプ。ブルペンに入るとか、入らないとかじゃないですよ。だから、彼の調整ペースは(こちらは)気にしていないです」と語る。阿波野コーチも「これが松坂流の調整ですか? とか、すぐに聞くじゃない?」と苦笑いを浮かべ、こちらの“ネガティブな質問”をやんわりと退けながら、こう続けた。

「長く苦しんで、ブランクがあった。そこから去年、シーズンを投げて、その反動も絶対に怖いんだよ。(戻ってきて)ずーっとこのまま、徐行運転が続くと、どうするかとなるけど、それはこれからのこと。キャッチボールを見ていても、投射角(投球の角度)はちゃんと下がってきていた。ここから(調子が)上がってこないなら、考えないといけないけど、ひとまずは本人。こちらは見守るしかない。それだけ肩はナーバスなんだよ」

 昨季6勝を挙げ、復活を果たした38歳。その安定感は今季の中日投手陣にも不可欠でもある。

「こっちの希望としては、一日も早く見たいというのはある。でも、143試合の勝負ですから、慌てさせないようにしたい」と与田監督。シーズンをトータルで考えれば、むしろこの時期での“短期離脱”で幸いだったと言える日が来てほしい。与田監督も阿波野コーチも、それこそ内心ではそんな“祈るような思い”なのだろう。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。