ただ、去年は第1クールの5日間でブルペンに2度入っていた。第2クールもほぼ1日おきにブルペン入り。つまり、2月上旬の時点で捕手を座らせてのピッチングを順調にこなしていた。

 その松坂は8日午後に北谷キャンプに再合流した。4日午後にキャンプ地を離れ、5日に離日、米到着翌日に手続きを済ませると、即現地を離れるという強行軍で沖縄へ戻ってきた。この“丸4日間の戦線離脱”からトレーニングを再開し、時差ボケも解消して、ブルペンでの投球も可能になるには、さしもの松坂でも数日は要すると見られる。そうした状況を踏まえれば、“本格的な再始動”は2月10日以降と考えるのが妥当なところだろう。

 この“10日間の遅れ”をどう見るか──。

 今年から就任した阿波野秀幸1軍投手コーチはまず、去年と今年の松坂を取り巻く環境の違いを挙げた。

「去年は入団するために仕上げてきたところがある。なんとか契約を勝ち取るためだったし、その後のことはその後だった。でも今年はそういうわけにはいかない。シーズンでの上積みが期待されている。だから、ペースを上げろ、上げろとやる方が、むしろ(こちら側が)やってはいけないことなんだよ」

 去年は、全力で投げていた。

 今年は、まだ投げていない。

 同時期での単純な比較だけで「今年の松坂はダメだ」とか「開幕に間に合わない」と短絡的に判断するのは“ナンセンス”というわけだ。逆に、ポジティブに考えてみれば、松坂は米球界で8年の経験がある。メジャーのキャンプインは2月中旬。長いキャリア、右肩の状況、さらに開幕を踏まえてスケジュールを逆算してみても、2月中旬からのキャンプスタートで、どの時期に、どういう調整をこなしていけばいいのか。2月中旬から3月下旬の開幕まで、その約6週間の調整方法は熟知しているのだ。

 阿波野コーチが、今季の松坂に関して特に考慮すべきだと強調するのが「右肩の状態」だという。「ピッチャーにとって、痛めたところが肘なのか肩なのかは、段違いなんだよ。一緒に考えちゃいけない。肩っていうのはダメージが大きいんだ。松坂は(ソフトバンクでの)3年間、ずっと苦しんできたわけじゃない? 再発しないように配慮されて、去年は勝ち星につながった。ピッチャーにとっての肩はそれだけ大変なんだ」

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首脳陣は祈るような思い