かつて火曜から金曜に移ったのは、視聴率低迷を打開するための苦肉の策だった。金曜夜8時には若者向けの音楽番組『ミュージックステーション』が放送されている。この直後の枠に移動することで、若い世代の視聴者を取り込もうとしたのだろう。だが、それでも視聴率が上向きになることはなかった。そこで、4月から火曜夜11時台に降格することが発表された。

 ゴールデンから深夜に落ちるというのは、明らかに「都落ち」の感がある。番組の制作費も大幅に下がってしまうため、大がかりな企画はやりづらくなるだろう。この枠でも結果を残せなければ、いよいよ打ち切りしか選択肢がない背水の陣の状態ではある。

 ただ、それでも、番組が面白くなるかどうかということに関して言えば、この枠に落ち着いたのは必ずしも悪いことではない。そもそも、テレビ朝日の夜11時台は「ネオバラエティ」と呼ばれる伝統的な人気枠である。テレビ朝日はこの枠でバラエティ番組を次々に立ち上げて、若い世代の視聴者を獲得することに成功した。ここで当たった番組がゴールデンに昇格する例もあった。ここ10年あまりの間、テレビ朝日が民放の視聴率争いでトップに迫っている理由の1つは、バラエティが好調だからだ。それを支えているのがこの「ネオバラエティ枠」なのだ。

 今の時代、学生や20~40代の社会人はゴールデンタイムにテレビをあまり見ていない。それよりも、学校や会社から家に戻って食事をして落ち着いた後、眠りにつく前の夜11時台こそが、彼らにとってテレビ視聴に最も適した時間帯なのだ。

 本来、若者向けのバラエティ番組である『ロンハー』がこの枠に落ち着くというのは、決して悪い話ではない。むしろ、幅広い視聴者層を狙わなくてはいけないゴールデンでは試せなかった挑戦的な企画を行うこともできるようになる。深夜枠に落ちたことで、番組の面白さは上がる可能性もある。

 過去にはテレビ朝日の夜11時台で『ぷらちなロンドンブーツ』というロンドンブーツ1号2号の冠番組が放送されていた。この番組では、一般の若者の浮気調査をする「ガサ入れ」など、過激な路線の企画が行われていた。一般人に対して友達感覚で容赦なくズケズケと切り込んでいく田村淳の素人扱いが新鮮だった。

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