松本航  (c)朝日新聞社
松本航  (c)朝日新聞社

 キャンプインに向けてルーキーの話題が多いこの時期のプロ野球。昨年のドラフト会議では西武以外の11球団が高校生野手を最初の指名で入札し、最終的にも12球団中5球団が高校生を1位指名で獲得することとなった。しかし当然のことではあるが、高校卒1年目から一軍のレギュラーを獲得する選手は滅多におらず、今年の戦力として計算できる可能性が高いのは大学、社会人経由でプロ入りした選手達である。そこで今回はそんな新人王も狙える即戦力候補の選手について紹介したい。今回はパ・リーグ編をお届けする。

 新人王争いの中心になりそうなのが、日本体育大でダブルエースとして活躍した松本航(西武1位)と東妻勇輔(ロッテ2位)の二人だ。松本は首都大学リーグで30勝をマークし、通算防御率も1点台と圧倒的な成績を残した。176cmと決して大柄ではないものの、実にゆったりとしたフォームで下半身主導で投げられるフォームは安定感抜群。好調時にはストレートが150キロを超えることも珍しくなく、多彩な変化球をコントロール良く操ることもできている。大学日本代表でも主戦として活躍しており、国際大会の経験が豊富なのも心強い。

 東妻はリーグ戦デビューが2年だったため勝利数は14勝だが、通算防御率は松本を上回っており、3年秋にはノーヒットノーランもマークしている。170cmと小柄だが、全身を使ったダイナミックなフォームから投げ込む150キロ台のストレートは迫力十分。腕を振って投げ込む鋭く大きく変化するスライダー、手元で落ちるフォークと必殺の決め球があるのも長所だ。松本は菊池雄星が抜けた先発、東妻はここ数年顔ぶれが変わらずに成績が下降しているリリーフ投手陣にうまくおさまる可能性が高く、チーム事情的にも追い風だというのも二人にとってプラス要因だ。

 上位指名の投手では他に甲斐野央(ソフトバンク1位)と杉山一樹(ソフトバンク2位)の二人が一軍キャンプに抜擢されたが、どちらかというと素材型の印象が強い。恵まれた体格でフォームも良く150キロ台のストレートの威力は申し分ないが、ともにスタミナ面や変化球のコントロールなどに不安があり、他にも有望な若手投手が多いチーム事情を考えると本格的に一軍の戦力になるのは二年目以降の可能性が高いだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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3位以下の投手に即戦力候補が多い