試合はロッテが5回までに9対1とリードしたが、この日も6回に“神様のいたずら”が起きる。1死一塁から7連打を浴び、5点を失ったのだ。

「会心の当たりは1本も打たれてないのに、打ち取ったはずの当たりが野手の間を抜けたり、9点取ってもらったのに、ひっくり返されるんじゃないか?と思いました」。

 なおも1死満塁のピンチでイチロー。だが、結果的にこれが幸いした。

「当時は彼と対戦するのが楽しみだったので、イチローを打ち取ることだけを考えて投げたのが良かった。もし、ほかの打者だったら、“もう1点もやれない”と意識して打たれていたかもしれません」。イチローを左飛に打ち取ったあと、ニールを三振に仕留め、追加点を阻止。そのまま9回まで無失点で投げきり、ついに連敗を止めた。

 試合後、報道陣から「これでゆっくり眠れるね」と言われた小宮山は、「いや、僕は興奮して眠れませんよ」と答えている。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2018」上・下巻(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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