「リハーサルはレコーディングスタジオで4日間やりました。演奏するたび、プレイバックしてチェックする。そのくり返しです。迫力で歌っていたところを抑えるように歌ったりすることで、もっと伝わることがわかったり、自信のなかったある部分の裏声が実は私の強みだということを知ることもできました。緊張とワクワクが止まりませんでした。演奏のクオリティをCDのレコーディングレベルまでもっていって、ライヴの本番に臨んだのです」

 ファンに求められている曲はできるだけ歌う。さらにメンバーと相談して洋楽も選曲していく。

「ライヴを終えると、自宅やホテルの自室で、各自その日の演奏を確認し、翌朝後藤さんと課題や感想をメールのやり取りをします。それを踏まえてリハーサルに臨むのです。終演後に飲みに行ったり遊びに行ったりするメンバーは1人もいません。全員が音楽とまっすぐに向き合いたいのだと思います。それらは今も変わりがありません」

 八神の声は明らかに艶を増している。ロサンゼルで休業している時期も、いつかまた歌う日が来ることを疑わず、コンスタントにヴォイストレーニングをしていた。この25年間毎日ジョギングしていることも今の声をつくっている。

「The Night Flightは6回目を迎えます。守りに入らず、ジャンルにこだわらず、ちょっとハードルの高い曲にもチャンレンジするつもりです」

(神舘和典)

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神舘和典

神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

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