「地元に支えれられているというのも感じますね。広島という土地というのがある。カープもそうだったけど、弱い時こそ自分たちがなんとかしてあげたいという人が多い。まぁ、田舎独特のご近所さまみたいな感覚なんでしょうね。だからこそ我々も頑張ろうと思う。でもそれに甘えてばかりではいけない」



「勝つことは最前提で、もっとチームとしてできることがある。地方のチームだからこそできることがある。大きな武器はメディア。中央と異なり、地方はニュースがない。だから毎試合、広島地区のローカルメディアが必ず取り上げてくれる。だから地元ファンを増やすのには絶好な環境だと思う」

 東京、大阪といった大都市でBリーグの話題が取り上げられるのは、よほどのビッグゲームでしかない。普段、何もない時でも地元メディアには露出がある。これは告知につながるだけでなく、選手にとっても多大な力にもなる。

「広島が地方の小さい町だということはわかっている。背伸びすることなく、ここでやれること、ここでしかやれないことをやる。地方だからこその可能性はまだまだ残されている」

 自ら広島の人間である尺野コーチは、この土地の持つ可能性について眼を輝かせていた。

 最後にトレイラーは語ってくれた。

「Dフライズは決してカープにはなれない。でも広島におけるスペシャルなチームの1つになることはできる」

 Dフライズ(=トンボ)とは宮島に生息する絶滅危惧種「ミヤジマトンボ」。そしてチームカラーの朱色は、世界文化遺産となった厳島神社の鳥居から採用されたという。広島にしかない特別なバスケットボールチーム、広島ドラゴンフライズが見られる日は、そう遠くないかもしれない。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。