ある企業の人事担当役員は、「人手不足で企業側は、とにかく数をとらなければいけない。もはや、質より数という状況にもなっている。もし新人が入社して1年後に辞めたとしても、それは本人の問題とされてしまう」と実情を語る。そして、あるベテランキャリアカウンセラーも「新卒バブルで正社員になれたとしても早期退職して転職がうまく行かず、いったん非正規になれば、そのまま不安定な雇用でしか働けないでいる若手は少なくはない」と指摘する。
厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)」によれば、新規学卒就職者の産業別就職後3年以内離職率の上位5産業は、大卒で高い順から「宿泊業・飲食サービス業」(49.7%)、「教育・学習支援業」(46.2%)、「生活関連サービス業・娯楽業」(45.0%)、「医療、福祉」(37.8%)、「小売業」(37.7%)となっており、新卒採用で入社しても半数近くが辞めている状況で、中年フリーターを生み出す可能性の高い業界ともいえないか。
新卒採用が売り手市場の今、若年層にとって、「中年フリーター」は他人事の問題のように映るかもしれない。しかし、早期離職したのちに非正規雇用から抜け出せないまま年齢を重ねていくという問題は、就職氷河期世代が“若者”だったころからさほど変わっていない。早期離職率の高さに構造問題があるならば、それを放置してはいけない。(ジャーナリスト・小林美希)