堂安のゴールで3-1とリードした直後の73分に森保監督は「さらに前線でタメを作ってもらったり、前線の攻撃の活性化だったり、あるいは勝っている状況の中、守備の部分で貢献してもらおうということで北川を入れました」という理由でトップ下を南野から、よりFW色の強い北川航也に代えたが、不用意に浅い位置でボールを奪われ、そこからGK権田修一のファウルによるPKで1点差にされてしまった。

「あの失点によって相手がまた盛り返してきた」と北川。アジアカップのような国際舞台の経験不足もあってか、それ以降も北川がゲームに入っていけない状況で、終盤ますますパワープレー気味の攻勢をかけてくるトルクメニスタンに対し、大迫はますます外せない存在になった。

 国内合宿から右臀部の負傷でずっと別メニュー調整が続いていた大迫。5日に行われた地元クラブとの練習試合から非公開(冒頭15分のみの公開)が続いているが、練習後のアイシングが取れたのがトルクメニスタン戦の前日であり、筆者も含めて北川のスタメンを予想するメディアは多かった。蓋を開けたらやはり大迫だったわけだが、逆にこの試合のスタメンが「大迫でなかったら」と考えるとゾッとする。

 それでも決勝まで3週間あまりで7試合をこなすレギュレーションでは大迫を欠く試合はあると想定しておくべきで、そこで北川や初戦の3日前に練習合流した武藤嘉紀の奮起が求められてくる。強豪との対戦が続く決勝トーナメントでそうした状況が出てくる可能性は高い。もちろん彼らが大迫と全く同じ仕事をできるわけではないが、チーム全体でカバーしていきながら、逆に大迫と違う持ち味で相手ディフェンスにプレッシャーをかけていってもらいたい。ただ、とにかく願うのは大迫がケガで離脱するような事態が起きないことだ。そうなると優勝はかなり困難になると言わざるを得ない。

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。