カルロス・ゴーン氏 (c)朝日新聞社
カルロス・ゴーン氏 (c)朝日新聞社
会見を開いた大鶴基成弁護士(撮影/西岡千史)
会見を開いた大鶴基成弁護士(撮影/西岡千史)

 カルロス・ゴーン日産自動車前会長の反撃が始まった。ゴーン氏は8日午前、東京地裁で開かれた勾留理由開示手続きに出廷し、ついに自ら「無罪」を強く訴えた。傍聴席には駐日フランス大使と駐日レバノン大使の姿もあった。一般傍聴席14席に対し、朝から1122人が席を求めて、地裁前で並び、日産ゴーン事件の関心の高さがうかがえた。

【勾留理由開示手続き後、会見を開いた大鶴基成弁護士】

 午前10時半、425法廷に現れたゴーン氏は両手に手錠、黒のスーツに白のワイシャツ、ノーネクタイ姿だった。頬がこけて顔はかなりやつれた様子で、髪の毛にはわずかだが白髪も見える。

 最初に裁判官から人定質問。氏名は「カルロス・ゴーン・ビシャラ」と答え、生年月日や日本国内の住所、職業を答えた。「職業は会社役員で間違いないか」という質問に「その通りです」と答えた。

 ゴーン氏は意見陳述で、弁護人から渡されたA4の紙を手にして証言台の前に座り、こう主張した。

「法廷で発言する機会を許してくれたことに感謝する。疑いがかけられていることについて、いわれのないものであると明らかにしたいと考えている」

「日産に対して心からの親愛と感謝の気持ちを持っている。これまで公明正大に合法的に、日産のために全力を尽くしてきた。日産を強化し、日産が尊敬される企業であることを回復するために力を注いできた」

「新生銀行とのスワップ取引について評価損が発生したあと、銀行が担保を入れるよう要求してきたが、私は要求に応えることができなかった」
「日産を退職して退職慰労金を受け取ってそれを担保とする選択肢もあったが、日産も厳しい状況の中で日産への道義的な責任があったのでしなかった。嵐の最中に船長が逃げ出すことはできなかった」

「もう一つの選択肢が日産へ一時的に担保を要請すること。日産には一切損害を与えていない」

 さらに「地検による訴追は間違い。開示されていない報酬を受け取ったことはない」「社内外の弁護士に検討され、承認されている」と正当性を強く訴えた。

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最後にゴーン氏が主張したこととは?