津田:最後はなんでしょうか。

佐藤:(4)琉球人です。今は日本によって植民地支配されているだけであり、いずれは民族自決権を行使して、即時、独立するべきだと主張する人たちです。

津田:独立派ですね。

佐藤:そうですね。自己決定権の確立という観点においては、(3)と(4)は一緒です。

津田:確かにそうですね。中国と香港の関係のように、日本のままで高度な自治権を獲得しようと主張する論者も、(3)と(4)の中間ぐらいということですね。

佐藤:そのとおりです。私のように連邦制を主張する私のような人間もそうです。私は独立論に距離を置いています。その理由は、もともと官僚だったせいか、一四〇万人ほどの規模の国家が、日本、アメリカ、中国という三つの帝国主義国家の間で、独立国として生き残っていくのは可能ですが、非常に大変だと感じるからです。だから、日本が統治するほうが、文化的あるいは過去の経緯からして、まだマシではないかと思います。

津田:若い世代は、どのアイデンティティーで生きている人が多いのでしょうか。

佐藤:大多数は(2)だと思います。今、若い人は保守的であると言われています。その理由のひとつは沖縄の生活レベルが上がって、本土(沖縄以外の日本)との差別を感じないこと。もう一つは、平和教育が形骸化しているからなんです。

津田:そうかもしれませんね。

佐藤:被差別意識も、平和教育も、若者にとっては押し付けに感じるんです。それに対するアンチとしての保守的になるという構図です。逆に、沖縄が侮辱されていると主体的に感じるようになると、ある臨界点を超えたところで、沖縄というナショナルな意識をもつことでしょう。

津田:佐藤さんは教育、そして、沖縄にずっと関心を持っておられる。その中で平和教育が形骸化していると感じるのならば、沖縄においてアイデンティティーとつながる新しい平和教育が、求められているということなのかもしれないですね。

佐藤:そのためには、沖縄の出身の教員たちが平和教育に従事しないとダメだということですね。本土出身者では、言葉が浮いてしまう場合がある。沖縄人の内在的論理がわからないからです。

津田:体験に基づく言葉が必要なんですね。

佐藤:また、翁長さんが目指していたことでもあるのですが、文化によって政治を包み込んでいくということが大事です。人がアイデンティティーを維持できるのは、文化があるからです。そのために、翁長さんは琉球語の標準語を制定し、そして、日本政府と公式の文書を結べるような公用語化を実現することに関心を寄せていました。“日本語”は沖縄にとって外国語だから、自分たちの独自の言葉とそれにもとづく文化を取り戻していかないといけないということですね。

津田:お話を伺っていると、今後、2020年から2030年ぐらいの十年間で、沖縄は大きく変わっていきそうですね。

佐藤:そう思います。