この論文の中では、様々な国で母乳の成分を調べた研究結果がまとめられています。それによると、母乳中の脂質はおおむね100ミリリットル中2.8~4.78グラム、糖質は6.5~8.0グラム、タンパク質は0.9~1.5グラムほどの範囲になっています。世界中に授乳中のママはいて、色々な食事を食べています。しかし一番ばらつきが大きい脂質を考えてみても、100ミリリットル中に小さじ半分ほどの違いしかありません。このことからも、食事内容によって母乳がドロドロになるのは考えにくいことだとわかります。

■「おが原因」と勘違い?

 そもそも、お餅やケーキを食べたからといって、血液がドロドロになるわけでもありません。食べ物の栄養分がそのまま血液に入るわけではなく、血液中の糖分や脂肪分の量はコントロールされているのです。例えばお餅は、もち米を蒸して杵でついたもので、100グラム中約50グラムは糖質、約45グラムは水分です。糖質が多い食べ物なので、食べれば血糖値は上がります。しかし正常な人の血中の糖分は、血液100ミリリットル中0.2グラム以下に調整されています。こんな少量の糖分によって血液がドロドロになるはずはありません。

 お正月にはよくお餅を食べますが、来客があったり、帰省したりと、普段と違う過ごし方をする場合も多いです。授乳間隔が空いてしまったり、ママの疲れがたまってしまうことで乳腺炎になったとしても、「お餅が原因」と勘違いされてしまうのだと思います。

 もちろん、授乳中はタンパク質やビタミン・鉄分など、十分な栄養素を摂ることは大切ですが、お餅やケーキなどを禁止する合理的な理由はありません。鏡開きには、ぜひ安心して美味しくお餅を召し上がってください。

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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森田麻里子

森田麻里子

森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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