三平 インターネット上の著作権侵害を黙認している人が多いのが現状ですが、これは立派な犯罪です。表ざたになった場合、賠償金の支払いを求められたり、裁判になったり、場合によっては刑事罰もあります。軽く考えている人があまりにも多いのではないでしょうか。

有賀 僕がブログ「旅するフォトグラファー」に書いた、無断使用への対処法に関する投稿は今もよく読まれていますし、警告書のサンプル文もたくさんダウンロードされています。「自分も無断使用されたのですが、どうすればいいですか?」と相談メールが届くこともあります。 僕自身の無断使用被害については、「元から断てばいいんじゃないか」と考え、作品を掲載しているブログに「noimageindex」というタグを埋め込み、Googleの画像検索に表示させないようにしました。そのおかげで無断使用は激減。この措置を取ることでブログ訪問者が減るかもしれないと思っていたのですが、ほぼ変化なし。写真を無断使用しようとする人は、はじめから僕の記事を読む気などなく、欲しい写真をGoogle画像検索で探してパクっていくことがわかりました。

三平 無断使用者にとっては誰が撮影したかや、その作品価値はどうでもよく、検索結果の上位に表示され、見栄えのいいものを安易にコピーしているだけなんでしょうね。

岩崎 誰かの写真やイラストが無断使用された場合、黙認していることも多いですよね。

佐々木 出版社でもよくあるケースですね。書籍の表紙などはいい例です。

岩崎 マンガやアニメの同人誌などもそうですよね。著作権者にとってメリットがある、もしくは実害がない場合は黙認されますが、デメリットが生じたとき、著作権者が初めて何らかのアクションを取るわけです。

三平 実害がない限りでは、尊敬やオマージュという言葉のもとに黙認状態が続いていますが、かといって自由にやっていいわけではありません。

佐々木 ツイッターのアイコンに好きなアニメや漫画のキャラクター、アイドルの顔写真などを使っている人は多いですけど、あれだって立派な著作権侵害ですからね。いかにみんなが著作権に無頓着かが見てとれます。

有賀 「そのキャラクターやアイドルが好きだから固いこと言わないで」という感覚なんでしょうけど、ファンだから好きでやっていることや尊敬と著作権侵害の境界がどこにあるかが難しいんですよね。(次回へ続く)

【座談会メンバー】
有賀正博
写真の著作権侵害との闘い方をイチからつづったブログが話題に。

岩崎拓哉
著作権侵害の本人訴訟経験あり。大学・大学院で教鞭を執った実績も。

三平聡史
みずほ中央法律事務所・代表弁護士。本シリーズでもおなじみ。

佐々木広人
増刊『写真好きのための法律&マナー』担当編集者でもある。肖像権・著作権問題の講演多数。

(文/吉川明子)

※「アサヒカメラ」2019年1月号から