お隣の韓国の文大統領が大企業に対する敵意を前面に打ち出し、所得分配政策で景気を良くすると言って、実際に最低賃金引き上げなどの政策を強力に推し進めた結果、現在、韓国では失業率が上昇し、経済も停滞。大統領の支持率は大幅に低下している。市場関係者は、これを強く意識しており、日本も同じ轍を踏むのかと懸念するだろう。

◆与党バラマキはOK、野党のバラマキは×という世論

 面白いことに、安倍政権の経済政策も、実際には成長戦略など皆無で、円安とバラマキだけでしのいできたというのが実情だ。しかし、自民党が行うバラマキには庶民から批判の声はあまり上がらない。なぜかというと、自民党は大企業寄りの政党だとみんな知っているので、経済成長の話は政権に任せておけばよいと考える。大企業の犠牲になって、庶民が貧しくなるのは困るが、そう思っている人たちには、安倍政権は、いろいろなバラマキ政策で手を打っている。それを見た人々は、「自民党が少し我々の方を向いてくれた」と評価するのだ。その際、バラマキのやり過ぎで日本経済がまずいのではないかという不安も一瞬頭をよぎるが、大企業が困るような破たんなどという事態までは行かないところで止まるはずだという安心感が、逆説的ではあるが、そこにはある。

 一方、野党がバラマキを主張すると、どうなるか。有権者は、「野党は、企業よりも労働者を優先すべきだと考えているのはわかる。しかし、彼らは、我々にお金を分配すれば、派手に使って消費が増えるというが、そんなに甘くはない。心配だからみんな貯金するに決まっている。景気は良くならないんじゃないか。それでも大企業に重税を課し、バラマキを続けるだけということだと景気のことが心配だ。消費増税反対はいいけど、それでは税収が足りなくなって破たんするかもしれない」と心配になる。もちろん、野党も「成長戦略」を唱えるだろうが、いくら言っても、野党はそのプロではない、と考える。さらに、民主党政権の失敗のトラウマもまだ残っている。

 そんな心理状態の中で、「株が暴落して日本売りが始まる」と派手な宣伝を耳にし、アナリストたちが「そうだ、そうだ」とはやし立てれば、多くの有権者が、結構不安な状況になるのは確実だ。

◆野党が「天使の成長戦略」をやっても支持率は落ちない

 安倍政権が「成長戦略」とか「規制改革」と言うと、「成長至上主義」とか、「大企業優先」などという批判が出るが、バラマキとは逆で、野党が「成長戦略」や「規制改革」を唱えても大きな批判は出ないと考えられる。なぜなら、野党はそもそも成長至上主義ではないと有権者が信じているからだ。

 ただし、これらの標語を使う時は、その前に自民党との差別化を図るための修飾語を付け加えることが必要だ。例えば、「自民党支持者の既得権を叩く規制改革」とか、「『悪魔の成長戦略』から『天使の成長戦略』へ」とかでも良い。

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自動運転、エネルギー…自民党ではできないなと思うようなものを