ただ、仮にこの「30球団構想」が実現していたら、どうなっていたんだろうという感はある。

 平成最後の年となった2018年、セは1423万5573人、パは1131万5146人と、両リーグともに観客動員で過去最高を更新した。広島のリーグ3連覇、さらに福岡を本拠に育成重視の3軍制を採り、最近5年で4度の日本一に輝いたソフトバンク、さらには日本ハム北海道楽天が仙台を中心に東北地方でその地位を確固たるものにした。地域密着での球団経営が、サッカーのJリーグと同様、日本のスポーツ界では“必要最低条件”となってきた。

 それは、球界再編の動きの中で改めて気づかされ、確認されたコンセプトとも言えるのだ。平成の時代が終わり、新たに迎える時代は少子高齢化による野球人口の減少も見込まれ、またスポーツ観の変化、パワハラ問題をはじめとした指導者の意識改革も求められる時代だけに、野球界も新たな視点、方策が必要とされる時がやってくる。その時、もう一度、球界再編の波の中で一度は浮かんで、消えてしまった「30球団構想」を考えるべき時が来るのかもしれない。

 それは、単なる球団数の問題ではない。地域に根ざしたプロ野球ビジネス、さらにはプロとアマと一体となって発展していくための新スキームとして、3軍制・30球団の「幻のプラン」はかなりの先取性があったのではないだろうか。15年前の動きを単なる“前時代の思い出”にするのではなく、当時の功罪を吟味し直した上で、野球界の将来の発展へ向けての一助にすべきだろう。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。