たとえば、約3日に1度、オシッコをズボンに引っ掛けるとか、撮影現場で「ちょっ、みんな静かにして!」とわざわざ周りを静かにさせてから放屁をするとか、7歳の息子と野球盤をやって、負けるとわりと本気でムクれるとか、そんな50歳は世の中に通じません。ま、50にならなくても通じないことばかりだとは思いますが、とにかく50という数字は僕に今までにないプレッシャーを掛けてきております。

 なので、僕、今年はちょっと自分を変えようと思います。「ありのままで」という、少し前に流行った歌の歌詞は、それはそれで意味があり、救いになりうる希望の言葉ですが、3日に1度オシッコをズボンに引っ掛ける49歳がありのままでいいはずありません。僕、今年は少し、大人になろうと思います。

 まず、ちょっとやそっとじゃ動じない。簡単にテンパらない。地図を読めるようにする。静電気を怖がらない。折り畳み傘を畳めるようにする。酔って色んな人に電話しない。放屁しない。してもいいけど静かにする。あと、鉛筆回ししない。これはいっか別に。あと、服を自分で選ぶ。NG出した時、奇声を発しない。撮影中に晩酌のことを気にしない。晩酌近づくとソワソワしない。セリフ忘れた時大きな声を出してごまかさない。焼き鳥を持ち帰らない。これもいっか別に。すぐ頭真っ白にならない。なんでもかんでも妻に頼らない。1日30分の運動を心掛ける。緑黄色野菜を食べる。豆は体にいい。そろそろ老眼鏡を買わないと。容赦なく進むよね老眼って。ごめんなさい何の話でしたっけコレ。

 新年から担当K氏に怒られそうな文を書いておりますが、50歳、まだまだ自分を変えられる歳です。いや、いくつになっても人は変われるかもしれない。そして自分を変えることは冒険でもあります。2019年、佐藤二朗の冒険を、どうぞ生温く見守ってください。(文/佐藤二朗)

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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