「これまで繰上償還を認めたのは、財政状況が厳しい地方自治体に特例として認めただけ。それも2012年を最後に行われていない。竹中氏が強く適用を求めてきたが、財務省内では相当な反発があった」

 それでも竹中氏が財務省に妥協を迫る様子は、未来投資会議の前身である産業競争力会議の16年の議事録にも残されている。竹中氏は、繰上償還を渋る財務省に対して不満そうにこう話している。

<1年間検討していただいたが、これが進んでいないというのは非常に残念な思いがある>

 だが、最後は未来投資会議のゴリ押しに財務省は押し切られた。金利3%以上の債務に限り4年間の時限措置にすることや、コンセッションを始める時に入札した民間企業が運営権対価を一括払いするなどを条件に認めた。複数の条件を盛り込んで適用範囲が狭めたことについて、ある財務省関係者は「最後の抵抗だった」と話す。

 一方で、この制度は別の問題も引き起こすことになった。水道コンセッションに参加したい民間企業から「運営権対価の一括払いは初期投資が大きくなりすぎる」と不満の声が出ているのだ。

 コンセッションに関心を持つ民間企業の関係者が言う。

「コンセッションの運営権対価の多くは、得られた事業収入から毎年分割で自治体に払うことが多い。それを、自治体が繰上償還をしたいがために民間事業者に対して一括払いを求めると、民間事業者は金融機関から巨額の借金をしなければならない。もちろん金利分は民間の負担。官邸は『参入しやすくするための制度』と言ってこの繰上償還を財務省に認めさせたのに、逆効果になりかねない」

 コンセッション推進派からも批判されるような補助金制度の導入に、なぜ竹中氏と福田氏はこだわったのか。安倍首相は、制度導入の意義について「先進的自治体を支援してまいります」(16年12月19日)と述べているが、そこには、表に出てこない思惑が見え隠れしている。

「政府は、13~22年度までの10年間で、コンセッションを7兆円の事業規模にする目標を立てている。莫大な金が動くように思えますが、実は、建物やインフラはすでにでき上がっているので、初期投資は少ない。金融機関にとっては金を貸す機会が少なく“うまみ”がない。それに対する不満を政府が受け止めて、わざわざ一括払いを促すような仕組みを作ったのではないか」(前出の官邸関係者)

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竹中氏と福田氏は取材に対し…