安倍晋三首相(左)と竹中平蔵氏 (c)朝日新聞社
安倍晋三首相(左)と竹中平蔵氏 (c)朝日新聞社
怪文書が出回り、国会で水道事業者からの接待疑惑が追及された福田隆之氏(c)朝日新聞社
怪文書が出回り、国会で水道事業者からの接待疑惑が追及された福田隆之氏(c)朝日新聞社

 12月中旬ごろ、永田町と霞が関にはあるウワサが飛び交っていた。官邸関係者は、それを聞いて驚いた。

【写真】怪文書が出回り、国会で水道事業者からの接待疑惑が追及された福田隆之氏

「11月に官房長官の補佐官を辞任した福田隆之氏が、現場復帰するというんです。本人自ら政府の未来投資会議(議長・安倍晋三首相)に『これからも関わる』と言っていたそうなんですが……」

 関係者が驚いたのも無理はない。福田氏はPFI(民間資金を使った社会資本整備)の専門家で、早大卒業後に野村総合研究所の主任研究員を経て、新日本監査法人(東京、現在のEY新日本監査法人)のエグゼグティブディレクター・インフラPPP支援室長になった。その実績を見込まれ、2016年1月に36歳の若さで菅義偉官房長官の補佐官に抜擢。事業認可を自治体に残しながらも事業運営を民間に任せる「コンセッション方式」の旗振り役を担っていた。

 ところが18年10月末、突然、福田氏辞任のニュースが流れた。先の臨時国会で水道事業にコンセッション方式を導入し、民間企業が参入しやすくする水道法改正案が議論されていた最中の出来事だった。

 水道事業のコンセッションは、反対派から「水道が外資に買われて利用料が値上がりする」との批判がやまない。そのため、国会でも与野党対決型の重要法案となっていた。にもかかわらず、政府の担当者が国会開幕前に辞任するのは異例中の異例。菅官房長官は記者会見で「業務に一定の区切りがついたため辞職したいとの申し出があり、認めた」と説明したが、それを額面通りに受け取る人はいない。野党議員は言う。

「福田氏については、臨時国会開幕(10月24日)の前に怪文書が出回っていた。文書にはフランスの水道事業者から接待を受けたなどと書かれていた。水道法改正の旗振り役が利害関係者から接待を受けていたとなると、国会で追及されるのは確実。焦った官邸がクビにしたというのが、実際のところでは」

 AERA dot.が入手したその怪文書には、福田氏の経歴のほか、家庭の財布事情まで書かれている。なかには<補佐官室にはポテトチップスが常備されている>といった食べ物の好みや、フランス出張の詳細な日程も記されていた。前出の野党議員は「内部の人間でないとわからないことが書いてある。情報の発信源は官僚だろう」と話す。

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官僚が福田氏に反発した理由