組織のトップに君臨していた人が、どちらも「セクハラおやじ」として有名だったという事実。組織ってダメじゃん、全然変わってないじゃん。

 さらには「そんなことしていない」とセクハラを否定しまくり、なかなか辞職しなかった点も2人に共通だった。恥ずかしくないのかと素朴に思う。認めてない以上、辞めるわけにいかないという理屈が、「羞恥心」を消すのかもしれない。

 共通してないこともある。組織内応援団。その存在が明らかになったのは、福田さんのセクハラだけだ。「福田の人権はナシってわけですか」「セクハラ罪という罪はない」。そのほかにも、どんどん援護射撃をしてくれた麻生太郎財務大臣。

 この人と福田さんに共通するのは、全能感ではないだろうか。自分は何しても大丈夫。トップになって突如そう思うのでなく、組織がそう思わせてきた。だから福田さんはセクハラをし、麻生さんは世論などまるで気にしない発言を平気で繰り返す。横山さんも多分、同じように「全能感」を持たされてしまったんだろうなあ、と思う。

 組織、罪、重過ぎだ。

だが、遠からず変わっていくのではないか。そう思わせてくれたのが、2018年12月の順天堂大学の記者会見だった。男女で異なる合格ラインを設定した理由を「女子の方が男子より精神的な成熟が早く、コミュニケーション能力が高い」からだと説明していた。

 根拠としてテキサス大学教授の1991年の論文を示したが、「そのような主張をしているわけではない」と心理学界から一斉に反論された。要は「試験をしたら点数が高いのは女子」という事実を前に、「女子はコミュ力も高いしなあ」というおっさん(と書いてしまうが)の実感ベースの言い訳を、論文を使って姑息にしただけのことだろう。

 だけど、女子の方が試験の点数が高いのは、就職の世界ではもはや常識だ。業種を問わず、あちこちでそうだと聞く。ということは、財務省でも大阪府庁でも試験をすれば、点数が高いのは女子なはず。「試験での男子優遇はダメ」ということが、医学部入試を通して公になった。就職試験にも、じわじわと影響が出るはずだ。

 組織のダメさを嫌というほど知らされた2018年だから、「じわじわと」と表現した。でも、女性がどんどん前へ出てきた「平成」の果実を、2019年に始まる新しい時代は手にできるはずなのだ。

 もうすぐ、セクハラおやじは出世できない世の中になる。そう信じたい気持ちでいっぱいだ。(矢部万紀子

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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