そして、経産省はこれに合わせるかのように、12月3日に、高速炉開発に向けた「戦略ロードマップ骨子」を発表した。一連の高速炉開発に絡むニュースの背景を読み解くと、経産省の利権への執着が見えてくる。

 読者もよくご存知のとおり、日本は使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策を原子力政策の基本としている。核燃料サイクルとは、行き場のない核のゴミを再処理してプルトニウムを取り出し、それを原発燃料として再利用するという計画だ。そして、この核燃料サイクル政策の二本柱となっているのが、青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理施設と「消費する核燃料よりも新たに生成する核燃料の方が多くなる」という夢の高速増殖炉「もんじゅ」だった。ところが、六ヶ所村の再処理施設も「もんじゅ」もいつまで経っても動かないことに対して、批判の声が高まった。特に「もんじゅ」は、1兆円かけても事故や不祥事続きで、誰が見ても先がないことが明らかとなり、ついに、16年には廃炉が決まってしまった。

 そこで、「もんじゅ」の代わりの高速炉(ただし、「もんじゅ」と違って消費した燃料以上の核燃料を生成する増殖炉ではない)として白羽の矢が立ったのは、フランス政府が進める「アストリッド」だ。日本の原発政策の要のプロジェクトがフランス政府のプロジェクトになったのだ。フランス政府は、アストリッドに19年までに10億ユーロ(約1200億円)を投じ、20年代半ばまでに建設可否を判断する姿勢を示していたのだが、建設コストが高騰し、全体では、数千億から1兆円にも上るという話になった。それではとても採算が取れないということで、実は、フランス政府は18年6月に計画の縮小方針を日本側に伝えてきていた。

 経産省がアストリッドに賭けた狙いは三つある。第一が、日本が原爆の原料となるプルトニウムを大量に保有していることに国際的批判が高まっているため、「アストリッド」を開発して、このプルトニウムを効率的に使用して減らすという計画を世界に示すことだ。大量のプルトニウム保有で高まる核開発疑惑への言い訳である。

 第二の狙いは、六ヶ所村で再処理されたプルトニウムを使う核燃料サイクルの話が今も生きていることを国内、特に青森県や原発立地地域に示すことだ。核のゴミは再利用するから核のゴミの問題は心配しなくてよいという神話を維持して、地元住民を騙すためである。

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