月経による鉄の喪失も忘れてはいけません。貧血の原因です。一部の女性アスリートは、痩せによる無月経をきたしている一方で、月経過多により鉄欠乏に陥っている人もいます。

 英ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのBruinvelsらが、2015年のロンドンマラソンに登録したランナーを対象とした調査によると、オンライン調査に回答した789名のうちの54%、マラソンに参加した1073名のうち36%、そしてマラソンアスリートの37%が、重い月経出血があると回答しました。また、全体のうち32%の女性が貧血の病歴があることを報告し、50%が鉄を補充した経験があると回答しました。

 また、米国のベイステート・メディカル・センターのRowlandらが30名の高校生の水泳選手の鉄欠乏の状態について調べた調査によると、フェリチンが12µg/L未満の鉄欠乏状態であった女子は46.7%、男子は0%であり、女子における鉄の食事摂取量は、推奨摂取量の43%と少ないことがわかりました。さらに、月経量が多くなるほどフェリチン濃度が低くなるという関係性も示唆されたというのです。

■低用量ピル使用率が低い日本人女性アスリート

 このような研究から、多くのアスリートが生理に問題を抱えていることがわかります。どうしたらいいのでしょうか。

 その一つが低用量ピルの使用です。低用量ピルを内服する女性アスリートは世界的には増えています。ところが、2012年に国立スポーツ科学センターが行った調査によると、日本人女性アスリート683名において低用量ピルの使用率は、たったの2%でした。

 ちなみに、日本における低用量ピルの使用率は、2018年の国際連合のデータによると0.9%。G20の国々の中では、最下位なのです。わが国はピル後進国なのです。

 さて、今年はラグビーワールドカップが開催されますね。ラグビーについては、以下の興味深い研究結果が2017年に発表されています。
 
 オーストラリア国立スポーツ研究所のClarkeらが7人制ラグビーの選手(男性27名、女性23名)を対象に行った調査結果によると、ラグビーのシーズン前から中盤にかけて、貯蔵鉄であるフェリチン濃度が20%ほど減少したことがわかりました。また、シーズンを通して23%の女子選手が、フェリチンが30µg/L未満の鉄欠乏状態であり、女性選手の鉄欠乏の最大の発生率(30%)は、シーズン半ばに認めたといいます。

次のページ
新年から運動を始めようとする人に…