これは日本に限った話ではありません。米ノーステキサス大学のTackettらの2016年の報告によると、大学生の女性アスリートの55%が体重を減らしたいと回答し、75%が食事量を減らすなど体重管理を行っているというのです。

 過度な減量は、身体の様々な影響を及ぼします。極端な食事制限から、過食や拒食といった摂食障害を引き起こすことにもなりかねません。食事制限を続けると、女性の場合、月経周期の乱れ、骨密度の低下を引き起こします。骨折してしまっては、選手生命を奪いかねません。

 ダイエットや食事制限による貧血も、男女問わずアスリートにしばしばみられる問題です。他にも、アスリートは、筋肉量が多いことによる鉄需要の増加、急激な大量の発汗からの鉄の喪失、運動による赤血球の破壊、消化管からの微小出血、そして運動によって鉄の吸収が抑制される、といった要因が絡み合い、貧血になりやすいことが指摘されています。

■ヘモグロビンが最も低かったのは…

 例えば、セルビアのノヴィ・サド大学のOstojicらが、84名の女子の異なるスポーツのトップレベルのアスリートを対象に行った調査によると、なんとヘモグロビンが9.1g/dLと最も低かったのは、長距離走のランナーで、どのスポーツにおいても鉄欠乏や鉄欠乏性貧血が多いことがわかったと言います。

 また、米ウィスコンシン州のマーシュフィールドクリニックのNickersonらが、シーズン中の72名の高校生のクロスカントリー選手を調査した報告によると、女子の34%、男子の8%で鉄欠乏を認めたと言います。20名の女子選手のうち9名において、消化管出血による鉄の喪失を認め、9名のうち7名は鉄欠乏であることがわかりました。

 運動をすると、筋肉や皮膚への血流が増えます。一方で、消化管への血流は減ってしまうため、粘膜の出血や壊死が生じ、貧血が引き起こされてしまいます。マラソンや長距離走など、耐久性を必要とする競技で多く見られる現象です。

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多くのアスリートが生理に問題を抱える