エンゼルス・大谷翔平選手 (c)朝日新聞社
エンゼルス・大谷翔平選手 (c)朝日新聞社

 日本ハムに入団した2013年以来「二刀流」でプレーしてきたエンゼルス・大谷翔平が来季は野手一本でプレーする。2018年、シーズンの途中に右ひじの靭帯に損傷が見つかり、同年10月に右ひじ靭帯再建手術(トミー・ジョン)を受けた。

 実戦登板に1年以上かかるとされるが、打者としては開幕に間に合う模様だ。メジャーのスカウトは「投手としてのリハビリも並行して取り組むし右ひじの状態もあるので首脳陣は当然無理をさせないが、大谷が野手一本で試合に出続ければ40本塁打もまったく不思議ではない」と分析する。

 40本塁打を超えればメジャーで日本人史上初となる本塁打王のタイトルも現実味を帯びてくる。日本人はパワーで外国人に比べて分が悪いだけにピンとこない話だが、不可能を可能にしてきた大谷なら実現できるのではないかと思わされる。メジャー挑戦1年目の今季は投手として10試合に登板し、4勝2敗、防御率3.31。野手では104試合出場で打率・285、22本塁打、61打点とメジャー1年目では日本人野手最多の18本塁打を更新した。ベーブ・ルース以来100年ぶりに本格的な「二刀流」に挑戦して残した立派な結果は、投票する全米の記者にも強烈なインパクトを与えて新人王を獲得した。

 今季のア・リーグの本塁打王はアスレチックスのクリス・デービスの48本塁打。576打数で本塁打率は12.00だった。大谷は326打数で22本塁打を放ち、14.81と本塁打率でデービスに匹敵する。

 大谷の凄みは対応力だ。メジャー初年度は初対戦の投手が多い。打席を重ねて球の軌道を体感しなければ攻略が困難な状況に加えて、投手としても準備してマウンドに立っていたことを考えれば、驚異的な成績をマークしたといえる。オープン戦途中にはツーシーム主体のメジャーの球質に対応するため、右足を上げていた打撃フォームからギリギリまで球を呼び込めるノーステップ打法に改造。短期間でアジャストすることに成功したことも、適応能力の高さと高度な打撃技術を表している。

 2年目の来季は初対戦の投手が少なくなり、球の軌道をイメージして打席に入ることができる。これは大きなアドバンテージだ。松井秀喜氏もヤンキースでメジャー初年度の03年は16本塁打だったが、2年目の04年は31本塁打と倍増している。大谷も来季は22本塁打から倍増しても不思議ではない。その先に日本人史上初の本塁打王も。「二刀流」は一時封印するが、来季は打撃一本で世界中を震撼させる可能性は十分にある。
(今中洋介)