さらに「子宮や骨盤まわりの血行は金脈や人脈につながっているので、ぽかぽか子宮になって子宮の声に従っていれば、必要なお金は自然と手に入る!」「女は子宮をポカポカにして好きなことだけをやるのが本来の生き方。それをしないと国の機能は麻痺して繁栄しない! だから外で働かなくていい、勉強しなくていい」と悟り、最終的には男がなんとかしてくれる、と確信を得たようです(ついでに“努力は性器のケアだけでいい”そうです)。

 子宮の声に従って好きなものを好きなだけ食べ、本音をため込まず悪口暴言はどんどん言い、わがままを極めて自分らしく生きれば愛されて子育ての問題もなくなり……と、彼女からのアドバイスはまだまだたくさんありますが、そのココロは「常識や固定観念に縛られず、自分の欲求に従って好きなことだけやろうよ! やりたくないことは、不幸のもとだから必要ナシ!」に終始します。さらに、婦人科系の領域にまで言及し、「子宮の不調はケチさの表れ」など、荒唐無稽な主張を発信。股を温めたり、生き方を変えれば疾患を克服できると解釈してしまうと、それを信じる女性たちの健康は一体どうなるのでしょうか?

 男性優位の社会で女性性を主張して啓蒙活動を行おうという運動は、今のところ欧米の「女神運動」が最も近い印象です。女神運動とは1970年代に欧米で活発になった、スピリチュアリティ運動の一種。その一部で「産む女性こそが自然界の力の象徴であり、女の体は穢れではなく神聖。崇拝の対象!」というようなことが主張されました。

 女神信仰としてのウィッチクラフト(魔女と関連づけられる知識・技術・信仰の集合)を研究、実践するアメリカの作家スター・ホークの著書『聖魔女術 スパイラル・ダンス』(鏡リュウジ・北川達夫訳/国書刊行会)でも「ウィッチクラフトにおいては、『すべての愛と喜びの行為は我が儀式』です。生命力の直接的な表現である性欲は、神秘にして神聖なものととらえます」と説明されています。

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子宮教の正体は…