空港ターミナルまで行くバスはないが、近くを通るバスはある。それは前から知っていた。何回か乗っている。しかしどこから乗ったかという記憶が曖昧だ。おそらく街の人に訊き、やってきたバスに乗った気がする。

 しかしいまはネットをつなぐと、さまざまな情報がヒットする。バス探しに苦労したブログがいくつかあった。総合すると、宿が多く集まるタメル地区に近くに、バスターミナルがあるらしい。

 バスターミナルは簡単にみつかったが、バスはなかなかわからなかった。近くにいる男たちに訊くと、ここに来るの一転張り。しかしそこには次々にバスがやってきて出発していく。行く先が読めないから、その都度訊くしかない。

 30分ほど待っただろうか。やっと空港近くを通るバスがきた。

 トリブバン国際空港は市街からそう遠くない。5キロほどだろうか。バスに乗って15分ほどで着いてしまった。

 運賃は20ルピー、約20円。

 空港の入口に近い道端で降ろされた。そこからターミナルに向かってとことこ歩く。

 やっと記憶が戻ってきた。何年か前も、この道を歩いていた……。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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