この発言には荻野も激しく同意。

「そうなんです! ほかのメンバーがセンターにいるときですら、サイドのゆきりんさんのほうが印象に残るんです。なぜ!? 不思議で不思議で。どんな努力をしているのか教えてください」

 加藤と荻野の問いかけに、柏木が観念したように語り始めた。

「曲によっても、パフォーマンスによっても、メンバー構成によっても違うけれど……。たとえばテレビの歌番組ならば、リハのときに頭の中でさまざまなパターンをシミュレーションはしています。メンバー全員の動きをすべて頭の中に入れると、経験的に、カメラがどのタイミングで私を映すかがわかってくる。その1秒、2秒は特に集中します。それと、ほかのメンバーの表情やしぐさも観察するかな。もし誰かがウインクをしていたら、同じアプローチはやりません。常に周囲と違う見え方になるように工夫しています。でも、今も試行錯誤の連続ですよ」

 本間もまた「ゆきりんさんをお手本にしています」という。

「誰も自分をみていなければ、ステージにいても、いないのと同じだよ」

 かつて柏木に言われたこの言葉を頭の中で反芻しながら、本間はパフォーマンスを行う。

「100人の会場でも、1000人の会場でも、客席の誰かが必ず私に注目する意識を持っています。ステージの前のほうに位置取りしているときは、しゃがんで前列の人にアイコンタクトをとるとか、2階席にパワーが届くように強く思いながらダンスをするとか。だから、私も自宅で一人ライヴをやっています。お風呂でも歌います」

 その発言に荻野が目を輝かせる。

「お風呂、最高だよね?」
「お風呂は最高!」

 本間も笑顔で応じた。

 結成から3年。NGT48のメンバーは、AKB48やNMB48などでキャリアの豊富な柏木をお手本に、そこにオリジナリティをプラスして、急速に進化をしている。

 そんな頼もしい後輩たちに囲まれ、柏木が表情を崩す。

「NGT48は、AKB48グループの中でも、特に活動が個性的です。地域密着度がものすごく強い。スタート時から新潟の各地でロケをやって、新潟の皆さんに支えられて、活動を続けてきました。地元のかたがたの温かさに包まれているからこそ、活動を重ねてなお、素直さ、純粋さを失わずにいられる。そういう存在性に感謝して、もっと素直に、もっと純粋に、2019年も頑張っていきたいです」(神舘和典)

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神舘和典

神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

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