敷田直人審判員
敷田直人審判員

 2018年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2018年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「審判&コーチの受難編」をピックアップ。

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 グラウンド上でボールが体に当たって痛い思いをするのは、何も選手に限った話ではない。時には審判だって、ボール禍に巻き込まれることがある。

 6月15日の広島vsソフトバンク(ヤフオクドーム)では、1イニングに2度にわたってボールが球審を直撃するという痛ましいアクシデントが起きた。

 5点をリードされた広島は3回1死一塁、西川龍馬が1ストライクから千賀滉大の2球目、149キロ直球をファウルしたが、この打球がなんと石山智也球審の右手を直撃した。

 あまりの痛さに、石山球審は一塁方向に走り出し、ラインをまたぐようにして、周回して戻ってきた。

 思わぬ事態に千賀はあっけにとられ、口をアングリ開けて心配そうに見つめる。ソフトバンクベンチからもトレーナーが駆け寄り、スプレーで患部を冷やすなどの応急処置を施した。

 しかし、石山球審の受難は再び繰り返されることになる。

 西川が左前安打で出塁し、田中広輔が見逃し三振に倒れた後の2死一、二塁、次打者・菊池涼介のとき、1ボールから千賀の2球目、145キロの内角直球がサインと違っていたのか、捕手・甲斐拓也が捕球に失敗(記録は捕逸)、このボールが石山球審の左手薬指付近を直撃したのだ。右手の痛みもまだ残っているのに、数分後に今度は左手……これはたまらない。石山球審は、今度は三塁方向に2、3歩走りかける動作を見せながら、激痛に顔を歪めた。

 再びトレーナーがベンチを飛び出し、スプレーで2度目の応急処置。

 今度は自分の投球が当たったとあって、千賀は申し訳なさそうな表情だったが、2死二、三塁のピンチに菊池を三振に打ち取り、この回を無失点で切り抜けた。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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