日本ハム・西川遥輝 (c)朝日新聞社
日本ハム・西川遥輝 (c)朝日新聞社

 2018年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2018年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は幻に消えた「節目の盗塁」についてピックアップした。

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 せっかく通算200盗塁を決めたと思ったのに、野手に“無関心”されて記録が幻と消える珍事が起きたのが、5月30日の日本ハムvs巨人(東京ドーム)。

 この日、通算200盗塁まであと「1」に迫っていた日本ハム・西川遥輝は、6対9とリードされた9回1死から左越え二塁打で出塁。次打者・大田泰示のとき、カミネロの初球が打者に集中して無警戒と見るや、2球目にスタートを切り、見事三盗を成功させた。

 直後、場内の大型ビジョンに「西川選手通算200盗塁」の祝福メッセージが映し出された。史上75人目の快挙である。

 ところが、これに「待った!」をかけたのが公式記録員。「巨人の野手が走者に無関心、無警戒の中での進塁になるので、野手選択です」という理由で認めなかったのだ。

 間もなく「西川選手の三塁への進塁は盗塁ではありません。訂正してお詫び申し上げます」の場内放送が入った。祝福メッセージは、大型ビジョンの担当者が早とちりしてしまったようだ。

 メモリアルの記録が取り消される形になった西川は、1死三塁から大田の右前安打で7点目のホームを踏んだが、最終回の反撃も一歩及ばず8対9の惜敗。記録も逆転勝利も幻と消えた。

 試合後、西川は「定義がよくわからないんですけど……」と困惑しつつも、「200盗塁を目指してやっているわけじゃないので」と気持ちを切り替えていた。

 それから2日後の6月1日の中日戦(札幌ドーム)、西川は2回無死二、三塁のチャンスに中前2点タイムリーを放った後、二盗を決め、今度は正真正銘の通算200盗塁を達成。成功率8割6分6厘は、200盗塁以上を記録した選手では、広瀬叔功(南海)の8割2分9厘を大きく更新し、歴代トップとなった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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