12月に入り、急に冷え込みが厳しくなってきた。温泉宿で疲れでも癒したいと思い立ち、ホテル予約サイトで温泉宿を探してみると、情報がありすぎて悩み疲れてしまった……なんて経験はないだろうか。『なぜ「それ」が買われるのか?』の執筆者で、博報堂買物研究所・上席研究員の山本泰士さんによると、いま多くの生活者が様々な場面で「選ぶ」ことに疲れ、ストレスさえ感じているという。同書では「ホテル予約の悲劇」の一例が紹介されている。きっと共感するはずだ。

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 来月休暇が取れたので温泉旅行にでかけようと思った。今月は出費が多かったから、なるべく安く抑えたい。スマホを手に取り、旅行予約サイトで検索し始めると、さっそくいい宿を発見。源泉かけ流しで、料理も美味しそう、建物もきれいで値段もなかなか手ごろだ。口コミ評価は5点満点中4.4点。悪くない。「どれどれ」と口コミを見てみると、目に飛び込んできた最近の評価は2点。コメントは「写真だけきれいな宿! 料理は冷めてるしいまいち、温泉もぬるい!」とひどい評価。

 口コミ全体の評価は高いのにおかしい、と思って他の口コミを見てみると、並んでいるのは似たような文体、似たような誉め言葉で書かれた5点評価の口コミばかり。う~ん、この5点評価って本当に信用できるのだろうか……。不安になって、他のサイトを見てみると、宿の評価は4.0。さっきよりも低いけれど、悪くはない。しかし少し不安で決められない。これはやめておこう。

■「空室はあと1室!」に誘導されて、ドッと疲れる

 それから4種類のサイトをめぐりさんざん検索して1時間が過ぎた。口コミ評価4.0以上で「源泉かけ流し」の温泉宿は思いのほかいっぱいあって、夕朝食付き、朝食のみ、夕食のみなどプランによって値段も違って比較するのがなかなか大変だ。部屋の広さで値段も変わるし、魚が美味しい宿もあれば肉の美味しい宿もある。詳しく知ろうと口コミコメントを見始めると、時間があっという間に過ぎていく。

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「空室はあと1室!」とあり手続きを進めると…