亀和田武さん
亀和田武さん

アサヒカメラ」もついに創刊93年。時は移れどカメラと写真の総合誌として歩み続けてきました。そして現在。インターネット、SNS全盛時代に雑誌そのものが揺さぶられるなか、われわれはどう進めばよいのか? まずは足元を見据えるべく、「アサヒカメラ」1月号では、コラムニストの亀和田武さんに意見をうかがいました。

*  *  *

――亀和田さんは雑誌の作り手であり、長く雑誌を見続けてきました。カメラや写真の雑誌にどのような印象がありますか?

 カメラと鉄道の雑誌はマニア度が高く、よそ者を受け付けない感じがしますね。僕はミーハーですから、京都に年に一度は行くんですが、京都特集を組んださまざまな雑誌は手に取るし買ってもいます。知らない店や場所の情報を入手できる実用書としてですが。「POPEYE」がいちばんハズレがないかな。

――写真の雑誌ではいかがですか? 本誌でも京都特集を組んでいますが。

 雑誌に掲載されている写真に突き動かされて、そこに行こうと思うことがあるんです。一点ものの写真には見る人を「拉致する力」がある。その点、写真雑誌の京都の写真は見たくなりますよね。僕は朝が弱いので旅先でもぐずぐずしてしまいますが、インパクトがある写真に促されると早く起きて、きちんと目的地を巡ることができたりします。

――亀和田さんにとって、名刹以外の京都の魅力は?

 喫茶店、カフェの文化ですね。京都には50年以上続く店がいくつもある。ソワレ、静香、築地とかね。街とカフェもいい被写体になります。

――京都大学の吉田寮にも行かれたそうですね。

 フォトジャーナリズム誌の「DAYS JAPAN」で、吉田寮の写真を見たからです。大学側から立ち退きを迫られ、存続の危機にある。築100年を超す建物の内部は静謐(せいひつ)さが漂い、旧制高校の寮を思わせた。かつてリベラルだった大学でさえ学生自治はなくなっていて、唯一、ここだけですよね。立ち退きを静かに拒む彼らを写真で目にしたとき、実際に彼らの顔を見たい、ヒトコト声をかけて、いくばくかのカンパでも手渡したいと思い、出かけました。

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