ところで最近、別な「女装CM」がオンエアされているのを発見した。中村倫也さんという人気急上昇中のイケメン君がママになって、バギーを押しながら「しめじって知ってる」とママ友たちに聞くCMだ。「何にもしてないキーボードってさ、スッピンさらすのとおんなじじゃない?」って終わるからキノコではなく、キーボード周りの何かなのだろう。


 中村さんも実は「半分、青い。」に出ていた。ヒロインが最初に好きになる男子で、ヒロインを最後まで応援する役どころだった。

「何にもしてないキーボードってさ、スッピンさらすのとおんなじじゃない?」という終わり方は、「あなた、シャンプーで、全身洗っちゃう人ー?」と同じ方向性で、それはつまり作り手の狙いが同じなのだと思う。

 女装の似合う(=威張らない)男性に、見ている人を諭してもらう。ソフトに脅すと言い換えてもよく、そういうことで消費を喚起する。そういう狙い。

 ただ違うのは、中村さんの女装は「きれいさ」を追求していること。個人的には「きれいな若いママ」より「ひげ濃いめの主婦」の方に断然心を動かされるのだが、若いママたちはきっときれいな倫也ママに惹かれるのだろう。

 調べると「しめじ」は「Simeji」だそうで、「きせかえキーボードアプリ」なのだそうだ。

 なぜキーボードを着せ替えるのかさっぱりわからない私は、キンチョーティンクルでシンクを磨き、ささやかながら大掃除ということにしようと思っている。 (矢部万紀子

著者プロフィールを見る
矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

矢部万紀子の記事一覧はこちら