欧米の競馬に比べると日本のファンからは馴染みの薄い感もある豪州競馬だが、実は高額賞金レースの宝庫でもある。同国最大のG1レースであるメルボルンカップ(芝3200m)は2018年から総額730万豪ドルに増額され、コーフィールドカップ(芝2400m)は500万豪ドル、コックスプレート(芝2040m)も500万豪ドルにそれぞれ増額された。また2000年に創設されたゴールデンスリッパーステークス(芝1200m)は賞金総額350万豪ドルで、2歳戦としては世界最高額レースとして知られている。

 さらにこうした伝統レース以外に、最近はジ・エベレストのような新設の高額レースが増えてきたのも特徴。今年12月には芝レースとしては世界3番目の高額賞金750万豪ドルのザ・ゴールデンイーグル(芝1500m)を2019年11月に新設することが発表され、前述のゴールデンスリッパーステークスなどを含む3レース全てを制した陣営には500万豪ドルのボーナスまで設定された。また2019年3月にはマイル戦としては世界最高額となる総賞金500万豪ドルのジ・オールスターマイル(芝1600m)も創設される予定だ。

 こうした高額賞金レース新設の動きから完全に蚊帳の外なのが欧州各国。もともと賞金額は総じて低く、重賞でも1000万円前後というレースが大半なだけに、欧州で米国やアジア、オセアニアの高額レースに対抗できるのは、仏G1凱旋門賞(芝2400m)の賞金総額500万ユーロ(約6億3000万円)くらい。G1英ダービー(芝2410m)の総賞金は150万ポンド(約2億1000万円)で、中距離戦線の締めくくりとされるG1英チャンピオンステークス(芝1990m)でさえ賞金総額は130万ポンドしかない。

 それでも欧州の一流馬が地元の主要G1を蹴って米国やアジアへ遠征することはほぼなく、欧州外への遠征はシーズンオフに差しかかる晩秋から翌年の春先までがほとんどだ。競馬が貴族の嗜みとして誕生した経緯から、新設レースの賞金よりも伝統レースを制する名誉を重んじる傾向が根強いのかもしれない。(文・杉山貴宏)