――少女時代の性的虐待について、なぜ彼女は誰かに相談できなかったと思いますか。

「彼女は信心深い家庭環境に育った。周囲には教会の関係者が多く、また親戚によって虐待にあっている子供が、それを打ち明けない場合は多い。近年これが問題になり、告白する人も増えたけれど、20年、30年間打ち明けていない人などが多かった。ホイットニーの場合も同様だと思うわ。彼女は子供だったから。相手が親戚などであればなおさら。でも死ぬ数年前には、私や親友に打ち明けて話した。彼女はツアーに娘を同行した。“どうして娘を学校に入れないのか?”と言われれば“私に何が起こったかわかるでしょ!”と反発した。だから、虐待を全く隠していたわけではなかった。でも女はこの点については非常に感情的になっていたのも事実よ。」

――ドキュメンタリーの制作にあたり、特にファンではないというケヴィン・マクドナルド監督をどうやって説得したのですか?

「はじめてケヴィンに会ったのはカリフォルニアのホテル。後で気が付いたのだけれど、そこはホィットニーがカリフォルニアでレコーディングしたときに滞在した事のある思い出の深いホテルだったの。共同プロデューサーの一人が推薦してくれた監督で、ケヴィンは私の話しにじっくりと耳を傾けてくれたの。私は映画の制作にはタイミングがとても大切だと言った。そして今こそ作るふさわしい時期ではないかと感じると。しばしの時が経ち、ホイットニーの人生について語るときではないかと。ケヴィンはホィットニーの人生、私達の人生に強い関心を示してくれ、やる気になってくれたの」

――彼女の家族は映画に対し、どんな反応をしたのですか?

「内容について筋書きについて了解を出している。彼らは彼女と伴に同じ人生を歩んだから。映画の内容について理解できていると思う。ゴシップ誌でネガティブなネタになるよりは、カンヌ映画祭のような場で、きちんと映画を見てもらう事のほうがベターだと感じているのよ」

(取材と文・在ロンドン 高野裕子)